電気の上手な使い方電気の上手な使い方からの一部抜粋

第4節力率とは

第1節では電圧・電流・電力について簡単にふれたが、ここで力率ということにつ
いて考えてみる。電気の専門家でもよく間違えるので、ここは大切なところだ。まず、理屈の前に蛍光灯を例に見てみよう。
いま、20Wの蛍光灯の消費電力を電力計で測定したら25Wであったとする。20Wの蛍光灯でありながら25Wを消費している場合、25Wの消費電力の内、20W分を有効電力といい、15W分は無効電力と呼ばれる。
交流電力の場合のおもしろいのが、この20+15≠25の関係である。つまり、蛍
光灯の光に転換されずに消費されている無効分は、単純に25-20=5というわけでなく、あえて15とされている。普通の感覚では、有効電力=消費電力-無効電力だが、交流電気では、次の平行式に基づいている。
すなわち、202 +152 =252 という関係である。つまり、無効電力は無駄な電力という意味ではなく、有効電力を引き出すために必要な、計算式上の便宜的方向量であるといえる。
そして、20÷25×100=80、これを力率80%というように呼んでいる。
すなわち、消費電力に対して有効電力となっているものの比率を力率という。通常、力率は平均すると85%程度といわれている。
電圧をV、電流をIとして、交流電力Pを数式で表すと、
P=VI・COSθ -----(2)となる。
すなわち、100V ×0.25A ×0.8COSθ =20 となるが、この計算式の中で A COSθ のことを力率と呼んでいる。
洗濯機を見てみよう。次のようなラベルが洗濯機の裏に貼ってある。

定格電圧   100V
定格消費電力 400W
定格出力   240W

この例では240÷400=0.6で、力率は60%ということである。

サークライン型の蛍光灯をみてみると、下表のように力率は86%位である。 

定格電圧   100V
定格消費電力67.5W
定格出力  58.5W

ところで、この力率が1以下になる理由は、電圧と電流の間の位相差(タイムラグ – 時間差)によるものである。すなわち、下図のように交流電力の電圧(e)と電流
(i)の任意の時間における高さ(強さ)には差があるからである。

通常、電線を巻いたコイル型の安定器とか電動機が交流電気機器に用いられている場合、電流は電圧に較べて同相でなく遅れ電流となる。交流の電力計算であるVI(ボルト・アンペア)の積分値の平均は、前ページの(2)式で与えられる。すなわち、VIの値に、電流と電圧の位相差(θ)の余弦関数(Cosθ)を掛けたものとなる。図4がその間の関係を表したベクトル(幾何学的方向量)図である。すなわち、皮相電力2kWに対して、電流と電圧の位相差(θ)が30度である場合に、有効電力は2×Cos30°(=2×√3/2)=√3=1.732kWということになる。ついでに、無効電力は2×Sin30°(=2×1/2)=1kWということになる。

では、このθのもつベクトル(幾何学的方向量)の意味を考えてみよう。
Cosθ=√3/2=0.866の場合、図4のように交流の電圧と電流の間に30°のずれがあるために、有効電力への換算係数がCosθであるということである。
サークライン型の蛍光灯の例を再び考えてみる。定格消費電力67.5Wということは、67.5÷100で0.675Aの電流が蛍光灯に流れているということになる。
また、この蛍光灯が定格出力で58.5Wということは、58.5÷100で0.58Aの電流ということになる。
消費電流(皮相電流①)が0.675Aであっても、有効に使用される有効電流(②)は0.585Aということになる。また、無効電流③は消費電流×Sinθ、この場合、0.675÷2で0.338Aということになる。当然のことだが(三角関数の定理で)、0.3382 +0.5852 =0.6752 という関係がある。
力率に関しての電気機器別の数値は概ね、表2のとおりであり、機器の使用にあたっては、力率を改善する工夫、あるいは、できるだけ力率の良い機器を選ぶ工夫が大切である。ただ単に格好だけでなく、定格消費電力に対して定格出力がどのくらいかという見方で電気機器を導入するように心掛けたいものである。特にエアコンの性能は、メーカーによってその差が著しいので、よく精査して購入すべきである。なお、力率の改善法については次章以下にて詳細にふれる。

表2 代表的な機器の力率

電気機器 力率 電気機器 力率
白熱電球
アイロン
電熱器
蛍光灯
高圧水銀灯
洗濯機
掃除機
電子レンジ
100
100
100
80-90
60-70
60-80
60-75
50-60
ラジオ
テレビ
電気こたつ
扇風機
冷蔵庫
大型モーター
アーク溶接機
100
100
100
60-80
70-80
70-85
30-40

ここで、参考のため、交流の実効値と電力についてふれておく。後の章で出てくる電力の実量値(実量制システム)との関係があるからである。すこし、頭が痛いという人は読み飛ばして頂いて結構である。後の章の理解のためになんらの支障もない。ここで は、文化系で数学に特に興味があるという人のために、あるいは理科系で数式がないと 納得しないという人のために補足したまでのことである。
交流の実効値とは、交流の1サイクルにおけるそれぞれの値の2乗の平均値の平方根をとったものをいう。通常、100Vまたは100Aの交流といえば、実効値が100Vまたは100Aの交流を意味する。そして、電圧の実効値V、電流の実効値Iと最大値V0 、I0 との間には次の関係がある。つまり、最大値は実効値の1.414倍である。


交流の電力を瞬時値で表すと、電圧に対して電流の位相差が存在するため、回路に加わる電圧をV=V0・Sinωt 、電流をI=I0・Sin(ωt-θ)とすると、
VI=V0・Sinωt・I0Sin(ωt-θ)となる。
これをt=0から1の間で積分し平均を取ったものをPとすれば、
P=1/2V0 ・I0 ・Cosθとなる。
交流の実効値、V=V0/√2、I=I0/√2の関係を用いて、V0、I0を代入変形すれば、P=VI・Cosθとなるのである。ついでに、電流の位相差のない場合の、すなわち、純抵抗回路の電力式の誘導は下記のようになり、P=VIである。