電気の上手な使い方電気の上手な使い方からの一部抜粋

第2節 力率改善

省エネルギーということから、電力需要家が第一番に考えなければならないことは、受電設備を設置した場合、トランスが必然的にかかえる無効電力という問題の解決である。すなわち、第1章で述べたように、トランスはコイルを使った機器であるために、電流と電圧の間に位相のずれが生じ無効電力が生じる。そのために、トランスの1次側に高圧コンデンサーを設置しないと、すなわち、1次側の力率を改善しないと、電力基本料金の割引を受けられないという点がある。その基本料金の割引のためには、力率改善が必要となる。
ちなみに、基本料金の算定式は下記のようになっていることから、力率が100%
(1.0)であると15%の割引が受けられ、85%(0.85)である場合には割引は0となることがわかる。
基本料金=1KW ( 1,200 ) 単価例えば円×(1.85-力率)×契約電力(例えば150KW)×1.03(消費税)では、力率を改善するにはどうすればよいのか。これは比較的簡単にでき、コンデンサーをトランスと並列して設置すればよい。その理論と実際を以下にまとめてみた。

第1項 コイルとコンデンサ
交流の誘導負荷(モーターなど)では、電流と電圧の間に位相のずれが生じる。抵抗負荷の場合には、図21のように電流と電圧は同相であり、100%の力率となる。白熱球とか電熱器等の熱エネルギー使用がこれに該当するが、実際の電気機器の利用では、このようにはじめから位相が一致している、ということはまずないといってもよい。
図23・図24のような、純粋にコイルだけの回路の場合、電流は電圧に90度遅れるため、図21のような同相曲線を描かない。これを「90度の遅れ位相差がある」といい、交流の性質上、コイルの持つ逆起電力が図23のように、電流が最大の時に電圧が0という関係をもたらすからである。
ここで図26のようなコンデンサだけの回路をみてみると、コイルの時とは逆に、コンデンサの持つ静電容量(充放電能力)から、図25に示すように電流が最大に流れるときが電圧の最低値となり、電流を90度、電圧に対して進ませる作用がある。この進相作用を利用して、コイル回路にコンデンサー(充放電器)を入れると、図21のような同相、省電力になるのである。

第2項力率改善法
図27は、電流と電圧の間の位相のずれをベクトルで表示したものだが、通常、電流と電圧を掛け合わせても100%の力率にはならない。なぜならば、コイル使用の製品では、電源側のトランスも、負荷側のモーターや蛍光灯に使われている安定器も、交流が流れると、コイルのもつ自己インダクタンス(図28(逆起電力の作用))により、交流回路に対して抵抗として働く、誘導リアクタンス(反作用)が生じるからである。
この誘導リアクタンスに対抗させようとするものがコンデンサの交流抵抗(容量リアクタンスと呼ぶ、図29・図30のI )で、C 電圧より電流を進ませる(進相させる)ことができるのである。具体的には、図30のように回路に対して並列にコンデンサを入れことによって、図29のように力率角θを改善し、θ=0とすることができる。

3項 コンデンサーの接続方法
前項でみた力率改善のためのコンデンサー接続の方法であるが、通常、図31にみるように、高圧側の高圧コンデンサーの設置で安心している需要家が多い。しかし、これは間違いである。負荷側に低圧コンデンサを設置しなければ、電源側の力率改善は出来ても負荷側の力率改善は望めない。よく力率改善機器といっているのが、この2次側のコンデンサーを中心とした機器構成を指していることが多い。力率改善のための高圧側ならびに負荷側のコンデンサー容量の算定は表18、表19を目安に行えばよい。

A)高圧進相コンデンサー容量算定方法
変電設備の負荷P(kW)に対して、改善前の力率がCOSθ1の場合、これをCOSθ2に改善するのに必要なコンデンサー容量C(kVA)は、下表数値Kを用いて、C=P×K÷100で求める。

B)低圧側コンデンサーの容量算定法
200ボルト3相誘導型電動機に取り付ける場合、個々に行うことが望ましいが、やむを得ない場合、通常運転時の負荷合計容量に対して、下表の基準でトランス2次側に取り付けるとよい。高価な力率自動調整器に代わる安価な方法である。
表19 低圧進相コンデンサー容量(上段50HZ地区、下段60HZ地区)